普通の方からみると、「カメラマン、フォトグラファー、写真家」と言ってもどれも同じようにカメラを使った仕事をする人と思われがちです。
実際には、もっと様々な違いがありそれらを整理、説明してみたいと思います。
カメラマンと写真家の違いは
カメラマン(商業カメラマン)の場合は、クライアントからのオーダー(依頼)があってから、その被写体(物や人など)を希望に沿って撮影します。決して自由に撮影している訳ではありません。あくまでもクライアントの希望するイメージに合うように撮影します。
写真家の場合は、自分がテーマにしている被写体(風景や動物や植物、人、その他様々)を自分の考えるタイミングで自由に撮影します。オーダーの有る無しには関係なく、自分の作品をストックしていきます。
余談ですが、たまたま、あるTV番組を観ていて、番組内では水中カメラマンが海の中の生物を撮影するとの内容でしたが、私から言わせるとカメラマンではなく、写真家です。オーダーがあってから撮影している訳ではありません。水中生物を得意とするジャンルで、常にその生態を撮影する写真家です。膨大な写真をストックをする事で、オーダーがあった際にその中から写真をピックアップし提供します。
※オーダーの有る無しで記載しましたが、ストックフォトを専門でやっているカメラマンもいるようですが、ここでは除きます。
カメラマンと言っても、仕事内容は幅広い
一口にカメラマンと言っても、ビデオカメラマン、つまり映像・動画( ムービー )のカメラマンと、静止画(スチール)の写真を扱うカメラマンに分かれます。動画のカメラマンと写真のカメラマンとの違いです。これらをまとめてカメラマンと言うのは、いささか誤解がありそうで本来「カメラマン」という言い方は、あまり好きではありません。映像、ムービーのカメラマンでも、テレビと映画で全く違いますし、CMも全く違う業種のカメラマンと言う事になります。さらに報道などのカメラマンもいます。
映画撮影、報道、CM、広告、雑誌、グラビア、TV、取材、ネット系、キッズ系(七五三、運動会、アルバム)、結婚式、写真館、等々、これ以上の分野があります。
TVやインターネット、紙面などを見ると、文字か写真、動画の3つの構成要素で作られています。文字以外は、映像(写真か動画)が必ず使われているという事になります。
報道系のカメラマンと商業系のカメラマン
また、写真を扱うカメラマンにも、報道系のカメラマン(フォトジャーナリスト)と商業広告系のカメラマンと大きく2つに分かれます。なおさら「カメラマン」という言い方は厄介です。報道カメラマン系と商業カメラマンは全く違います。考え方、発想の原点が違うので、同じように写真を撮る仕事ですが、全く違います。
商業系のカメラマンも撮影する内容は様々
更に、商業カメラマンと言っても、人物、ポートレートを撮影するカメラマンと、ブツ撮り(商品撮影)をするカメラマンとは、また違います。これとはまた別に雑誌などの出版系カメラマンと広告系のカメラマンとも全く違います。簡単に言うと1カットのギャラが全然違います。出版系カメラマンには、そもそも1カットでいくらの基準がありません。写真が掲載されるページ毎に、ページ単価いくらと計算されます。そのくらい基本から違います。また、東京の駅張りポスターや書店で見かけるアイドル写真集などで活躍する商業カメラマンと地方都市で学校の遠足や集合写真や家族の七五三など記念撮影をするカメラマンなどカメラマンの世界にも幅広いものがあります。
簡単にカメラマンと言ってもこれだけの違いや幅、それぞれの活躍の場、世界があります。
フォトグラファー、写真家の世界は
「フォトグラファー、写真家」は同じくくりで大体良いと思います。海外では、写真家の事を「Photographer(フォトグラファー)」と言いますが、日本では、作家、芸術家、音楽家などの並びで写真家と言います。作品に対しての作家性があるかないか、と言う事だと思います。
どちらかと言えば、フォトグラファーという言い方はある程度、商業的な雰囲気があります。つまりお金をもらって仕事をするという事です。また、報道カメラマンとの違いを出すために、報道カメラマンや映像カメラマンとの違いを差別化するために、フォトグラファーと言う事があります。
写真家とはカメラを使って表現するアーティスト
それに対して写真家は、お金に関係なく自分自身の作品の制作を行っていく作家、アーティストです。誰から頼まれて作品を作る事はまず無いでしょう。自分の信念や表現したいものを作品として生涯作り上げるのが写真家です。ひとくちに写真家と言っても、テーマは、動物だったり、風景だったり、人であったり、植物であったり、スポーツであったり、いろいろな分野の写真家が居ます。お金儲けが目的ならやめた方が良いでしょう。本当にそのテーマが好きで撮り続けられないと中途半端になってしまいます。
ただ、日本で写真家(専業)として食べていける人は全国で30~40人くらいでしょう。写真スタジオを経営しているカメラマンの方が年収が高いと思います。ニューヨークやロンドンなど海外で活躍している写真家は除きます。
動画(ムービー)のカメラマンと写真のカメラマンを区別するために、あえて「フォト」を強調したフォトグラファーという言い方をする場合があります。
カメラマンという職業がこれだけ幅の広い多様化した分野なので、「写真」を扱うという意味のフォトグラファーの方が良いかも知れません。
海外に行けば有名な写真家になれるか?
海外に行こうが日本で写真家を続けるかは、関係ない事だと思います。撮りたい物が海外のある場所でしか撮れないものであれば、それはまた別の話で、例えば、ホッキョクグマを撮りたいなら、日本国内では無理なので、ホッキョクグマの生息地に行って撮ると言った具合です。
ニューヨークに行って写真家をやれば有名になれるとも限りません。インターネットでどこでも発信できる時代ですから、作品に力があればどこにいても才能のある人はすぐに注目を集めるでしょう。
日本の古い有名な写真家で、植田正治さんと言う人をご存じの方も多いと思います。植田正治さんは、ずっと日本で写真を撮り続けた方です。海外に行って有名になった訳ではありません。日本に居ながらにして海外の写真家の目に止まり高い評価を受け世界的に有名な写真家となりました。ですから、海外に行こうが日本で写真家を続けるかは、関係ない事だと思います。良い物は良い、才能次第です。誰かがあなたの写真を見ています。
誰かに認められる事や有名になる事だけが写真家ではない
ゴッホは死んでから有名な画家になりました。写真家も同じで、どこかに撮りためた写真を発表することもなく、誰に見せる為でもない、ただ、毎日好きなテーマで撮り続ける写真家も居ます。一般的に写真家と言えば、どこかに作品を展示発表したり、写真集を出したりするのが写真家のイメージにあると思いますが、決してそうではありません。カメラを通して自分の内面を表現するのが写真家だと思います。作品を他に見せても見せなくても関係ありません。
自分がどんなカメラマン、写真家、フォトグラファーになりたいのか決める
イメージしやすいのが、自分の目標とするカメラマン、写真家、フォトグラファーを決める事でしょうか。過去に活躍した人や現代でも活躍する人かもしれません。その人の作品を通して「自分だったらこう撮る」と言うのがあって自分らしい写真、世界が作れるかもしれません。真似じゃダメなのです。真似しようと思っても、やはり自分の好みが写真に出ます。それが周りから受け入れられるかどうかは分かりません。逆に皆に受け入れられる写真を撮ろうとすると他のカメラマン、写真家、フォトグラファーも撮っている写真だったりします。つまらない写真になるわけです。
自分らしい写真が撮れて、周りから認められると良いですね。